市場規模と成長
東南アジアの自動車市場は、2022年には約260万台の販売台数を記録し、2023年から2032年にかけてさらなる成長が期待されています。特に、2023年から2028年にかけての電気自動車市場は86億ドルから354億ドルへと年率32%の高成長が見込まれており、乗用車市場も2023年の521億ドルから2028年の730億ドルへと年率7%で拡大する見込みです。
ASEAN諸国では、電気自動車のエコシステム構築に向けた取り組みが盛んに進行しています。マレーシアでは、電気自動車の減税措置を実施するだけでなく、2025年までに1万基の公共充電インフラを整備する計画が進行中です。
さらに、タイでも2030年までに新車販売の3割を電気自動車とする政策目標が掲げられており、各国政府が率先して普及促進策を推進しています。
価格要因とブランド認知
中国の電気自動車メーカーは、東南アジア市場において積極的に本土化戦略を展開しています。現地生産拠点や現地パートナーとの合弁会社を設立することで、地域に密着したビジネス展開を推進しています。
東南アジア市場における消費者の車購入行動は、価格とブランド認知の影響を受けています。電気自動車は運用コストやメンテナンスコストが優れていますが、初期購入費用の高さが購入意欲に影響を与えています。そのため、政府の購入補助金や税制優遇政策が重要な役割を果たし、消費者の購入意欲を高めることが期待されています。
さらに、ブランド認知とマーケティング活動も消費者の購入行動に大きな影響を与えています。特に、中国の自動車ブランドが東南アジア市場で成功を収めており、タイでのBYDの成長などが効果的なブランド戦略と市場展開が消費者に与える影響を示しています。
2. 競争状況
中国自動車ブランドの台頭
東南アジアでの中国自動車ブランドの市場シェアは急速に拡大。Wuling(五菱)インドネシアの販売台数は3万台を超え、前年比17%増加。Great Wall Motors(長城汽車)のスマート製品はASEAN諸国で2万人近くのユーザーを獲得。BYD(比亜迪)は数か月連続でタイの電気自動車販売でトップを獲得。2019年の25.7%から2021年には46.1%に増加し、ASEAN輸入電気自動車市場で第1位となった。2023年上半期には、BYD ATTO 3がタイ市場で1万1167台を販売し、市場シェア35%を占める。また、NETA(哪吒汽車)のNETA Vシリーズは5955台を販売し、市場シェア18.8%を記録。
- タイ市場では、中国ブランドの純電気自動車の市場シェアは約80%に達している。
- BYD、Great Wall Motors、Changan Automobile(長安汽車)、SAIC Motor(上汽)などが市場地位を強化。
市場投資と拡張の戦略
中国の自動車企業は、販売に留まらず、東南アジアの電気自動車産業の発展に積極的に貢献しています。Great Wall Motorsはタイ、マレーシア、ラオス、ブルネイでの定置施設を運営し、ベトナムとカンボジアで戦略的な提携と製品プロモーションを展開しています。また、NETA(哪吒汽車)やSAIC-GM-Wuling(上汽通用五菱)も積極的に東南アジア市場に参入し、インドネシアを拠点に周辺国での展開を進めています。
東南アジア市場における中国自動車ブランドの主要な競争相手は、日本や韓国の自動車メーカーです。中国ブランドの強みは、低価格の電気自動車を提供し、現地化戦略を積極的に推進していることにあります。一方、日本は電気自動車市場で中国や韓国に比べて遅れをとっており、技術力や充電インフラ整備においては韓国が優位に立っています。電気自動車市場の発展に伴い、これらの競争構造が変化する可能性も考えられます。
3. 企業戦略
中国自動車企業の東南アジア戦略
中国の自動車企業は、東南アジア市場において、地元パートナーとの緊密な連携を強化しています。この協力体制により、比亜迪などの企業は事業領域を拡大し、地域の規制に迅速に適応しています。さらに、地元企業との連携を通じて、消費者からの信頼と支持を築き上げ、市場拡大に向けた基盤を着実に固めています。
生産効率と地元市場の需要に対応するため、比亜迪を含む中国の自動車企業は、東南アジア各地に新たな工場を積極的に建設中です。中国の電動自動車市場シェアは急速に拡大し、特にタイが最大の市場として注目されています。
東南アジア諸国は、電動自動車産業の持続可能な発展を目指し、充電インフラの整備や政策の策定を進めています。特にインドネシアは、ニッケルなどの資源を活用した電動自動車の製造・輸出を積極的に推し進めています。
4. 今後の展望
東南アジアの電動自動車市場は今後も着実な成長が見込まれます。特に、タイは現在東南アジア最大の電動自動車市場であり、将来的にはこの地域の電動自動車製造の中心地として注目されています。
東南アジア各国では電動車に関する政策や法規が変化する可能性があり、中国企業はこれらの法的環境の変化に適応する必要があります。一方、日本や韓国の自動車メーカーが電動自動車分野での競争を強化しており、中国企業にとっては新たな挑戦となるでしょう。
中国自動車企業は、現地企業との連携を強化し、現地での生産や流通ネットワークを拡大しています。東南アジア市場向けの電動自動車の研究開発を継続し、製品の価格競争力を維持する取り組みを行っています。さらに、消費者向けのマーケティング活動や啓発活動を強化し、電動自動車に対する認知度や受容度を高める努力を続けています。